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営業活動のデータ化・・・そもそも必要なの?(後編)

「営業活動のデータ化・・・そもそも必要なの?(後編)」

営業活動のデータ化・・・そもそも必要なの?(前編)では、営業データを管理/共有することの必要性について、「定性データ」の側面からお話ししました。
日々商談し、大量の案件に触れる営業こそ、こまめにデータを残すことで機会損失を発生させない環境をつくれるのです。

さて、今回は同じ“データ”の中でも「定量データ」、つまり営業活動を「数値化」することの重要性についてご紹介したいと思います。

最近は統計学の本が多く出版されていて、市場での関心の高さが見て取れます。
しかし、このような本を手にとっても「やっぱり、ハードルが高そうだな~」と思ってしまいますよね。(私もその一人です。)

しかし、難しい統計を用いなくても実は簡単な数字を使うだけでも十分だと考えています。

数値をもとにした会話で、スムーズなやりとりを実現する

では、そもそも、なぜ数値化が必要なのかという視点で見ていきましょう。
今回は「営業部」の視点からメリットを2つ挙げてみます。

【1】部門間の会話がスムーズになる

【2】課題が明確になる

まずは1つ目のポイント、「部門間の会話がスムーズになる」ためのプロセスをご紹介します。

「営業と開発」「営業とマーケティング」など、部門間のコミュニケーションがうまくいかないケースがよくあります。
その多くは「営業部」が絡む場合が多いのではないでしょうか?

営業部門から開発部門に対しての「製品改善要望」について例を挙げてみました。

営業は、お客様から直接ご要望をいただく機会が多いです。
伺った内容をもとに、営業担当はより付加価値の高い製品にすべく開発担当に改善要望を出します。
しかし、開発が改善理由を聞くと、「営業先の企業から要望があった」「営業先で“よく”指摘される」「これをつけると売上につながる」など、色々と出てきますが、いずれも根拠が曖昧です。

開発部門の立場からすると、具体的な改善理由が不透明なため改善箇所がわかりません。
あるいは、過去に抽象的な依頼をもとに製品改善を実施したものの成果に繋がらなかった…という経験もあるようです。
そのため、なかなか実施に踏み切れない状態になってしまっています。

営業と開発とのコミュニケーションがうまくいかず、部門間での責任のなすり合いのようになってしまっているケースは相当多く存在しています。

一方で、改善までの流れがスムーズに運ぶ企業もあります。
そのような企業では、同じように開発が改善理由を聞くと営業から以下のような返事が返ってきます。
「この1年間の案件数〇社の中で、失注が〇%でした。その内〇%はこの機能差が失注原因になっています。しかも、その〇%が競合A社に取られています。しかし、この機能以外は高い評価をいただいているので、この機能が改善されることで、この失注案件の〇%は獲得できると考えています。そのため、急ぎでこの機能改善をお願いします!」

このように、事実を根拠にした理由を述べています。
具体的な数字が入るメリットは、誰とでも同じ尺度で情報を共有できるため、認識の違いが起こりにくいという点です。
部門の違いがあっても課題を共有しやすくなるのです。

改善前後の成果を可視化し、次につなげる

さらに、数値をもとに製品改善を行った場合、改善の前後でどれだけ成果に違いが出るのか可視化できます。
先ほどのケースの場合は、製品改善が「受注率」の向上に寄与する事が想定されているので、「受注率」を改善前後で比較すれば、改善効果の有無の議論に繋がります。
あるいは、「競合A」との勝敗比較をしてもいいと思います。

より具体的な共通尺度を用いた議論は、部門間で課題解決をしていくために非常に有効です。

先に述べた例では、営業の話は抽象的過ぎて「本当?」と思われてしまいます。
ただでさえ営業情報は、他部門から把握しづらいブラックボックスの状態ですので、口頭で抽象的な説明をされても信用できないのです。

営業部門は直接お客様と折衝している人達であるため、だからこそ、しっかりと営業データを管理して、“事実“をベースにした議論が重要です。
それによって、色々な提案が社内で通りやすくなります。

数値を把握し、自社の課題を明確にする

続いて、2つ目のポイントの「課題が明確になる」という点についてご紹介します。
「御社の課題は何ですか?」と言われ、即座に答えられない経験をした方もいるのではないでしょうか?

その「課題」の1つを見つけ出すために、「粗利率」を例に考えてみましょう。

前期の「粗利率」が30%。今期の「粗利率」は15%だったとします。
この、「粗利率」の低下は当然見過ごせません。

このような状況で、数字を見ずに「なんとく●●が考えられるのでは?」と検討する人は少ないと思います。
それでは、どのような流れで考えていくのでしょうか。

例を1つ考えてみましょう。
その会社では、ほぼルートセールスで営業担当を都道府県別に分けていたとします。

① 地域別に比較する

営業担当の都道府県(エリア)別で見ていく必要がありますよね。
その地域別に「売上金額」「粗利」「粗利率」を出したのが下の表です。
(構成比率の低い都道府県はその他でまとめました。)

売上金額 原価 粗利 粗利率
東京都 15,000,000 10,500,000 4,500,000 30.0%
神奈川県 15,000,000 10,500,000 4,500,000 30.0%
千葉県 20,000,000 17,500,000 2,500,000 12.5%
埼玉県 50,000,000 48,000,000 2,000,000 4.0%
その他 20,000,000 15,000,000 5,000,000 25.0%
合計 120,000,000 101,500,000 18,500,000 15.4%

すると、「粗利率」が顕著に低い地域は埼玉県だということが一目瞭然です。

② 担当地域の顧客別に数値を出す

次に、その地域における企業ごとの利益率を「売上金額」「粗利」「粗利率」を算出します。
この例では、地域の大口客の「粗利率」が極端に低いことがわかりました。

売上金額 原価 粗利 粗利率
ABCD社 40,000,000 39,500,000 500,000 1.3%
EFGH社 3,000,000 2,700,000 300,000 10.0%
IJKL社 3,000,000 2,640,000 360,000 12.0%
その他 5,000,000 4,000,000 1,000,000 20.0%
合計 51,000,000 48,840,000 2,160,000 4.2%

詳細の原因を追っていくと、ある競合企業が相当安値で価格を出していたため、価格競争になり利益が落ちていることがわかった、といった具合です。

実はこのケースは、時系列で「ABCD社」の粗利率の変化を見ていくと、この取引先の粗利率の低下は、今始まったことではなく、5年間前から徐々に悪化していたことがわかったのです。

ABCD社 売上金額 原価 粗利 粗利率
2017 40,000,000 39,500,000 500,000 1.3%
2016 41,000,000 32,500,000 8,500,000 20.7%
2015 45,000,000 33,000,000 12,000,000 26.7%
2014 43,000,000 30,000,000 13,000,000 30.2%
2013 45,500,000 29,800,000 15,700,000 34.5%

もっと早い段階で「粗利率」の悪化傾向に目をつけていたら、競合の動きに気付いて、他に手が打てていたのかもしれませんね。

このように、PL(損益計算書)分析の場合は、数字を追っていくことを、多くの企業が行っています。
しかし、営業分析ではあまり行われていません。
予実管理(予算/実績管理)で留まっている場合がほとんどではないでしょうか。

プロセスごとに数値を見ることで、課題を洗い出す

では、営業データを使った数値分析とはどのようなものでしょうか?
一番わかりやすいのはプロセス分析です。

「売上をあげろ!」と言われても、何から手をつければいいのかわかりません。
しかし、プロセスを因数分解していくと課題が見えやすくなります。

問合せ数 × 商談化率 × 受注率 × 単価 売上
1,000件 × 60%
(600件)
× 5%
(30件)
× 1,000千円 30,000千円

例えば、業界水準や過去の実績と比較して受注率が低いとします。
すると、営業プロセスの中の「受注率」の低い原因を特定し改善することが優先課題だということがわかります。

そこで、受注率を上げるための施策を考えていきます。
ロープレを変えてみたり、販促資料を充実してみたり、トップセールスの提案資料を共通化しノウハウ共有をしてみたり…。
しかし、結構見過ごされがちなのが、顧客セグメントごとのプロセス分析です。

同じ、計算式を図のように顧客セグメントごとに分解をしてみます。

問合せ数 × 商談化率 × 受注率 × 単価 売上
セグメントA 350件 60% 0.0% 1,000千円 0円
セグメントB 200件 60% 2.5% 1,000千円 5,000千円
セグメントC 200件 60% 10.0% 1,000千円 20,000千円
その他 250件 60% 2.0% 1,000千円 5,000千円
合計 1,000件 60% 5% 1,000千円 30,000千円

すると、「セグメントC」は、受注率は高いが、問合せ数が少ないことがわかりました。
調べてみると、実はセグメントCは製品特性と顧客課題がマッチしていて、購入いただきやすい顧客層だったのです。

一方、「セグメントA」は受注率が低いにもかかわらず、問合せが多いことがわかります。
こちらも調べてみると、Aは製品特性と顧客課題がマッチせず、購入には至りづらいセグメントでした。

このような結果が出たとすると、例えば次のような対策を打つ必要があります。
テレアポなどプッシュ営業をしているなら、アプローチするターゲットを「セグメントC」に切り替えることも方法として考えられます。

また、他の手法としてWebプロモーションなど、「問い合わせ」を獲得していることも多いと思います。
この例では、「セグメントC」からの「問い合わせ」を増やすため、マーケティング戦略そのものの見直しが先決かもしれません。

実はこれ…数年前、弊社の「アルテマブルー」で同じような事が起きていました。
そして、前述したような、戦略の見直しによって大事に至らずに済んだ経験があります。

このように、ざっくりとプロセス分析をするだけではなく、様々な軸で分析をしてみると非常に面白いです。
また、他のケースでよく行われているのは「営業担当者」ごとのプロセス分析ですね。

システム開発会社であれば、システム導入状況で分けると非常に面白いです。
「未導入」「A社製品」「B社製品」「C社製品」のようなイメージです。
さらには、複数の軸を組み合わせてみる、など色々試してみると面白いと思います。

さいごに

「数値化」というと、難しく考えてしまう方々もいらっしゃいますが、重要な指標だけを、様々な角度で分析するだけでも多くの事実が浮かび上がってきます。
その中から、さらに掘り下げる際には、前回のような「定性データ」も活用しながら追っていくといいでしょう。

あまり認識を持っていらっしゃらない企業も多いですが、営業活動で得た情報というのは、ネットリサーチや調査機関のデータでは得られない、企業独自の情報です。

情報を独自の視点で活用するということは大きな企業競争力に繋がります。
データを蓄積、活用するためのシステムがSFA/CRMとなります。

また、SFA/CRMで、保有しているデータをうまく活用するためにはPDCAサイクルの推進が欠かせません。
SFA活用時のPDCAサイクルについてご紹介している資料もございますので、参考にしていただければと思います。
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