15年前から行われていた、徹底された組織営業とは
近年では、「名刺管理」という言葉も浸透し、社内での導入も進んでいるといえるでしょう。
しかし、そういった名刺管理サービスを活用する前は、いったい、どのように効率的・効果的に組織で営業活動をしてきたのでしょうか?
私は15年ほど前、商品先物取引会社で営業マンとして働いていました。
いわゆる「ブラック企業」で、中でも度を越えたブラック度合いで有名な業種です。
当時、「商品先物取引の営業マンは、なかなかすごい奴らだ!」と思われていたようで、その証拠に、会社に営業マンへの引き抜きやヘッドハンティングの電話がよく掛かってきていました。
なぜ15年も前の会社を話題にしたかというと、その会社では、今でも参考にできるような、徹底した見込顧客管理、標準化された営業プロセスによる組織営業が確立されていたからです。
そこで今回は、「見込顧客管理」の方法についての例をご紹介させていただきます。
見込み顧客の分類で、効果的な営業活動を実現
当時、CRMのような見込顧客管理システムなどはなく、顧客情報は全て紙で管理していました。
アポイントを獲得したら自ら手入力で「見込顧客シート」に記入し、名刺をもらったら「名刺ノート」に糊で貼り付ける。
末端の営業はそのような事をしていました。
会社では、こういった、営業マンが集めてきた情報をもとに、「興味あるリスト」というものを作成していたのです。
当時の先物営業のアプローチ手法は、主に以下3つ。
・テレコール:テレアポ取得を目的
・テレロール:資料送付を目的
・飛込み:名刺交換を目的
こういった営業活動から得られた顧客の分類として、「アポを了承してくれた人」「資料送付をOKしてくれた人」「名刺交換をしてくれた人」に分けました。
さらに、この中で失注になったお客様を「興味あるリスト」として管理していたのです。
なぜ、失注したにも関わらず、「興味あるリスト」に分類していたのでしょうか?
営業マンが用件を伝えた上で、「アポ」「資料送付」「名刺交換」に応じてくれた人は、多少なりとも自社商品に対して興味があったといえるでしょう。
たとえその時のタイミングが悪かったり、自社の営業マンとの相性が合わず受注できなかったとしても、今後、「受注できる可能性が高い人達」と考えることができます。
そのようなお客様の情報を会社で管理することで、より有効に活用しようと考えていました。
「興味あるリスト」を、新人のレベルアップにも活用
では、このリストを誰が利用していたかのでしょうか?
実は、新入社員たちが使っていたのです。
通常、営業手段として、電話帳を用いてテレアポを獲得していました。
しかし、この会社では新入社員がいきなり電話帳でテレアポさせるのはハードルが高いということを認識していたため、まずは、「興味あるリスト」から電話営業をさせていたのです。
※私も「興味あるリスト」を使っていた一人です。
この顧客リストからアプローチすると、思いの外アポが取れるのです。
さらに、新人社員の初受注の多くがこの顧客リストにから生まれていたという事実もあります。
このように、新入社員であっても確度の高い顧客リストである、「興味あるリスト」からスタートすることで、営業を始めてからすぐに成功体験を積むことができました。
そうすることで、新人社員も自信を持った状態で、徐々に先輩社員と同じ電話帳営業にステップアップできたのです。
本来、「興味あるリスト」を経験のある営業にアプローチさせておけば、新入社員より売上をあげられていたでしょう。
しかし、その企業では目先の数字よりも若手社員の育成を目的として、「興味あるリスト」を活用していました。
現在にもつながる「顧客管理」の手段としての名刺
こういった、「受注に至らなかった名刺」の活用というのは、最近でも課題の一つにあるようです。
実際に、名刺管理サービスをご検討いただく際、そういったご相談をお伺いすることが多くあります。
「名刺」と一言で言っても、顧客の状態によって以下のような分類が可能です。
この中でも、より受注に近いところにある「取引先名刺」「短期案件名刺」については、よく使われている名刺だと思います。
では、その他の「中長期案件名刺」「失注案件名刺」「非商談化名刺」はどれだけ活用されているのでしょうか。
こういった名刺は机の引出しの奥へしまわれており、今後も使われる可能性が低くなってしまっていることが往々にしてあるようです。
実は、先ほどの例に出てきた「興味あるリスト」とは、名刺分類の中でも「中長期案件名刺」「失注案件名刺」「非商談化名刺」の3つを指します。
こういった名刺を企業内でもきちんと活用できる状態にすることが、重要となってくるのです。
さいごに
最近では、展示会やセミナー、Webサイトをきっかけに、名刺交換をさせていただく機会が増えてきました。
しかもそれは、テレアポや飛込みといった一方通行な名刺交換に比べ、興味を持った状態でお会いするお客様となるため、より商談の可能性が高い方々だと考える事ができます。
今や、名刺もスキャンするだけでデータ化できるので、昔のような手間を掛けずに「興味あるリスト」を作成することができます。
そう考えると、引き出しの奥にしまわれている名刺が、非常に「もったない」気がしませんか?
実はこの「もったいない」という言葉は、外国語には訳せないそうです。
意味をgoo辞書で調べてみると、このような意味があります。
「有用なのにそのままにしておいたり、むだにしてしまったりするのが惜しい。」
まさに、企業に眠っている名刺のことですね。
皆さまの会社でも「もったいない」名刺を活かしてみませんか?